【HIRI ビデオクリップ】



音楽はCDで聴いたりDVDで映像と共に楽しむことができますが
やはり本当の醍醐味は生のサウンドと臨場感でしょうか。

5月8日(木)サン・セバスチャンのKurssalでケパ・フンケラの
LIVEがあったので、心を躍らせながら出かけました。

LIVE毎に編成の変更があるようですが(ケパ+2人のトリオ編成の時もあり)
当日はケパを含めて7人編成のバンド形式でした。
(トリキティシャ、ギター/マンドリン、キーボード、ベース
チャラパルタ/アルボカ、チャラパルタ/パーカッション、ドラム)

ステージの背面ではスクリーンにイメージビデオが投影され
曲によってはバスクのコンテンポラリーダンスグループAukeranが
ケパ達が奏で出すサウンドと見事にコラボレーションした踊りを
披露し、ビジュアル的にも動きのあるとても面白いステージ演出でした。

Compania de Danza Aukeran
http://www.aukeran.com/

今年結成10周年を迎えるこのダンスグループも、踊りのベースは
バスクの民族舞踊であり、それにモダンなアレンジを加えていく
という形がケパの音楽の在り方にもおおいに通じています。

この日はバスクでセレモニーや大事な客人を迎える際に敬意を
表わすために演じられる「Auresku(アウレスク)」をケパが単独で
演奏し、Aukeranのトップダンサーが演じステージの幕開けとなりました。

その後はアルバムタイトル曲「HIRI」と続き、同アルバムから中心に
以前のアルバムの曲もおりまぜて、「ビルバオ午前0時」からの「Bok Espok」
で締められ、アンコールはサン・セバスチャンにゆかりのある曲や
サッカーチームのレアル・ソシエダ応援歌まで飛び出す大サービスぶり。
2時間という時間がとても短く感じる楽しさでした。

ビルバオ(ビスカヤ県)出身のケパがかつて初めてトリキティシャの
コンクールで演奏した時、トリキティシャ発祥地で演奏者も多い
ギプスコア県が会場だったことと、ケパの演奏の仕方があまりにも
斬新だったため、保守派の観客達からブーイングをうけたことが忘れられないという
少し苦い思い出も過去にはありましたが、すでに今ではギプスコア県内でも
相当な人気者です。

観客はもちろん拍手喝采で大喜びなのですが、演奏しているケパや
バンドのメンバー、ダンスグループの面々、アンコールの時に参加した
地元のアコーディオン、チストゥ奏者達全員が醸し出す
「演じることの幸せ感」が満場に漂うパフォーマンスでした。

これはケパが持っているコーディネーションの才能に依るところが
大きいと思いました。

バスクはもとより世界中の色々なミュージシャン達とジョイントしたり
世界各地の音楽祭(特に民族音楽系のフェスティバル)に参加したり
また地元バスクの音楽学校で若い生徒達に楽器の演奏指導をしたり
多忙を極める日々を送りながら、次の、またその次のプロジェクトも
同時進行中のケパ。

良く「天才」という言葉で形容されていますが
天から授かった才能は、超早弾きと言われる演奏力、創造力だけに
留まらず、過去の全ての作品データや涌き出てくる新しいアイディア
コラボレーションするアーティストの本質的に良い部分を抽出する力
あらゆる情報を完璧に管理できるキャパシティも備えている
本物の天才です。

天才ですが、全くエキセントリックではなくてとてもオープンな
温かい人で、そういう人柄だからこそ内外の多くの歌手やミュージシャン達が
一緒に仕事をしたいと思うはずです。

今年の年末に発売予定のアルバムでは、スペイン・ポルトガルの
有名歌手達が挿入曲を全てバスク語で歌うそうです。

「バスク語やバスクの心はバスク人にしかわからないと思ってる人達
に特に聴いて欲しい」というケパの言葉には「自分達は特別だ」という
偏った優越感を抱いている一部のバスク人や、マドリッドはじめ他地方で
「バスク」と聞いただけで拒絶反応を示す人達にも、肩の力を抜いて
一人の人間として音楽を、バスク語の響きを楽しんでほしいという
願いがこめられているのだと思います。

その新作が出た後の世間の反応が楽しみです。

ケパの音楽はこれからも多数の人達を大きく包み込みながら、
もっともっと多方面に広がっていくことでしょう。